無料ブログ作成サービス JUGEM
本の販売はこちら
沖縄出版協会ロゴ
←prev entry Top next entry→
かいだん
0
       いやだいやだ。
     きょうも雨じゃない。いつになったらやむのかしら。
     いやになっちゃう。
     でもね、晴れたら晴れたで、暑いばっかり。
     ただでさえ、歳も歳なのにねぇ。こう雨ばっかりだったり、暑かったりすると、肌の荒れがひどくなるばかりじゃない。
     体にもガタがきてるしねぇ。
     ホントいやになっちゃう。

     トントントン。
     あれ、もう出勤の時間! いつの間にかこんな時間になっちゃったんだわ。
     いやよねぇ。最近、時間があっという間にすぎちゃう。寝不足なんだけど、あまり眠れないのよね。歳とっちゃうと、時間の感覚までなくなっちゃうのかしら。
     もう何歳になったのかもわすれちゃったけどね。

     それにしても、いつも早いわね。この人。いい加減、いい歳だと思うんだけど、足取りも軽やかだしさ。若ぶってるのかしら。
     もう少ししたら、みんなやってくるわ。また代わり映えのしない連中の顔をみなければいけないのも、辛いわねぇ。
     でもしょうがないかぁ。
     だって私は、ここに居続けるしかないんだしね。
     少しだけ眠ろうかな。
     私だって乙女だからね。少しでも睡眠取って、お肌をいたわってあげなくちゃぁね。
     ゴツン、ゴツン。
     朝から不機嫌そうな奴も出勤してきたことだしね。
     ザンザンザン。
     雨はやまないねぇ。

     う〜ん。やっぱり眠れない。
     年甲斐もなく、この連中の飲み会に付き合ったおかげかしら。久しぶりに遅くまで飲んでいたから、私まで楽しくなっちゃって、興奮がまだ醒めないじゃないの。
     やだ、朝っぱらから煙い!
     この連中ったら、タバコふかすしか能がないのかしらねぇ。だらだらとさ。入れ代わり立ち代わりタバコを吸いに来ちゃってさぁ。

     いやだ、あんたいつからここにいるの?
     さっきから?
     えっ、ということは、私の話してるのを、ずっと聴いてたの?
     悪趣味ねぇ。
     楽しいの?
     ふ〜ん。じゃあしょうがないわね。
     あらっ! よく見たら、あんた、この会社の中で一番影が薄いやつじゃないの。いつも下ばかり向いてさ。何が楽しいんだろって見てたのよ。
     へー、そうなんだ。楽しいんだ。だったらいいのよ。そうは見えないけどね。
     じゃあ、何も聞かない。
     というかさ、あんた、いつも私の独り言聴いてたの?
     そう。恥ずかしいけど、仕方ないわね。
     だって、私も寂しいしさ。これから話し相手になってくれる? 私の身の上話すからさ。

     家族? いるわよ。
     知らないの? 隣にいるじゃない。
     そう、今は歯医者さんになっているビル。あれは私の弟なの。
     足がダメになって、動けなくなっちゃったから、会うこともできなくなったけどね。
     だって、私は日がな一日、この場所で座っているだけだからねぇ。
     でもね、弟は優しいから、今でも、「お〜い姉ちゃん。元気してるか?」なんて聞いてくるの。
     私もね、弟の声を聴くと元気出ちゃって、「「もちろんよ。あんたこそ元気なの? 若い女に騙されてない?」なんてどうでもいいことを聞いちゃうんだけどね。
     可愛い弟よ。あんたも可愛がってあげてね。

     両親? この下の駐車場になっているところにいたんだけどね。あんたがたの言葉で言うと、区画整理っていうの? そのときに壊されちゃったの。ちいちゃい二人でね。仲良く楽しく暮らしてたんだけど、もう歳も歳だったしね。しようがないわね。
     大丈夫よ。あんたたちを恨んでなんかいないから。寿命だったんだと思うわよ。

     でも、私の家族は、もう弟一人きりになっちゃった。
    寂しいけどね。

     あんたそういうけどね。私だって、若い頃はもてたんだからね。ここら辺では一番の器量よしでね。遠く小禄や泉崎あたりからも、是非デートしたいって、お誘いが来たもんよ。
     まだ若かったし、もっといい人がいるだろうって思ってたから、みんな振っちゃったんだけどね。
     今になって、一人くらいキープしときゃ良かったなんて思うけど、後の祭りよね。

     もう、あんたいい加減、仕事に戻りなさい。いつまでも油売ってるんじゃないわよ。

     えっ! 本! 出してくれんの?
     いいわよ。あたしでよけりゃね。

     えっ、自費出版?!
     あんたも幸薄そうな顔してるけど、やるわねぇ。
     お金なんてないもの。
     なんてね。
     ホントはね、お金ならあるの。
     使わないだけなの。

     そのお金を使ったらって?

     いやだ! 自費出版だったら出さない。
     だって、私の本だったら売れるんだもん。
     きっとね。
     だから、もう話はおしまい。

     う〜ん。そうね、ずっと話を聞いてくれるんだったら考えてあげてもいいわよ。
     まぁ、そのうちね。
     じゃあ、きょうはこの辺でね。
     あれ、いつの間にか日が暮れてきたじゃない。
     寝不足で、お肌に悪いから、きょうは早く寝ることにするんだから、あんたも帰りなさい。
     はい、おやすみなさい。
     じゃあ、また明日ね。

     雨は止んだわね。
     今晩は、なんだか暑くなりそうだわねぇ。
     眠れるかしらねぇ。
     肌荒れが心配だわぁ。

    | tant-o | 時事出版の階段 | comments(0) | trackbacks(0) |
    スポンサーサイト
    0
      | スポンサードリンク | - | - | - |
      Comment
      name:
      email:
      url:
      comments:
      Trackback
      http://oki-jiji.jugem.jp/trackback/223